Autodesk University Japan 2015

A-2 製造

株式会社嘉穂製作所 設計技術部 開発設計課 課長 坪根 伸也 氏

その 3Dツール使えていますか?
ニッチ企業の 3D データ活用法

意外な効果を発揮 〜 設計ツールは営業ツール!

株式会社嘉穂製作所
設計技術部 開発設計課
課長

坪根 伸也 氏

Track A製造の「A-2」セッションでは、株式会社嘉穂製作所・設計技術部開発設計課課長の坪根伸也氏が登壇し、同社における3D設計ツールの活用事例を紹介しました。福岡県飯塚市に本社を構える株式会社嘉穂製作所は、スロープカー®(斜行モノレール)、風力発電タワー内昇降機などの開発・製作から設置、メンテナンスまでをトータルに手掛け、国内およびアジアでの数多くの導入実績を誇ります。1970年の設立以来、自社製品の開発にこだわる同社の設計部門では長年、Autodesk製品が利用されています。現在、同社ではプロジェクトの計画提案〜受注〜設計プロセスにおいて、Inventor(3D)、Showcase(3D)、AutoCAD Mechanical(2D)を利用しており、車両デザインモデルに関する部分を3D、軌条に関する部分は2Dで設計するという、「すべてを3D化しない、適材適所に使い分けた運用」で3D設計ツールの設計現場への浸透に成功しています。

多くの企業では、3D設計ツールが設計効率を改善することは理解しているものの、自社の設計業務に当てはめるとなると、2Dから3Dへの移行がなかなか上手くいかないというケースも見受けられます。しかし、嘉穂製作所においては2002年のInventor導入から9年が経った、2011年頃から業務での3D設計ツールの活用が定着してきました。「2002年当初は3D CADを導入しただけで満足していた状態で、実際は同梱品だったAutoCAD Mechanical(2D)ばかりを長年、設計者は使っていました。これでは投資対効果を測ることもできず、『まずは使ってみよう』と、2011年になって自ら率先してInventorを使い始めました」と坪根氏は振り返ります。初めは業務に関係のないスケッチを描いてみて、「押し出し」「回転」「フィレット」など基本的な機能を使用しモデルを作ってみたところ、「簡単にモデリングできることに気づいた」と坪根氏はスライドを交えながら説明します。使っているうちに車両デザインモデルが作れるようになったものの、「部品図レベルまで全ての設計を3D化するのは大変」ということも実感。しかし、「何かに使えないか?」 と思案していたところ、あるとき、営業部長から「私の頭の中にあるイメージを3Dで再現できないか?」と言われ、『営業ツール』としての活用に至ったといいます。フレーム部分などの詳細データは省き、魅せる3D図面で製品のイメージをより視覚的に伝え、提案力アップ、受注へとつなげるためのプレゼンツールとしての活用です。

従来、同社では、2D図面の車両外形図や2Dイラスト、外注によるパース図、イラストやミニチュア模型を使用したプレゼンを行っていましたが、InventorやShowcaseを利用することで、
①図面を読めない人に対しても車両形状等の認知性を向上
②様々な視点からのイラスト作成が社内で容易にできる(外注不要)
③寸法がデフォルメされていないため、モデルを使用した詳細な協議が可能
④施工した場合のイメージを可視化し、仕上がり・出来映えを事前に確認可能
⑤ビジュアライゼーションされたモデルによる購買意欲の向上
といった様々なメリットが生まれています。
坪根氏は、実際にビジュアライゼーションされたデジタルプロトタイプの例を挙げながら、寸法がデフォルメされていない、精巧な3Dイラストの訴求力を提示。さらにフレーム部分等の見えない部分を省略している様子を、Inventorを使ってデモンストレーションしました。活用にあたっては、「社内教育」も大事な要素のひとつですが、「まずはスケッチ、押し出し、回転の基礎操作を教える。あとは好きなものを自由にモデリングさせます。わからないことがあれば、ヘルプを活用して自分で解決させます」と坪根氏。特に「Inventorのチュートリアルはトレーニングに非常に効果的」と高く評価します。それでも利用しない設計者がいる場合は、3D設計ツールを扱えないと業務に支障が生じる環境に、強制的に配置するのもひとつの手だと言います。

最後に3D設計ツールの活用のポイントとして、坪根氏は次のように語りました。「初めから業務に落とし込むことを考えると、なかなか先に進めません。まずは使ってみること。過去に設計した図面をもとにモデリングをしてみて、それを他部署の人に見せて、いろんな意見をもらうこと。肯定も否定もすべて受け入れ、集約し考えてみると業務とのリンクが見えてくるはずです。そして、業務内の何かひとつでも3D化してみる。このとき重要なのが、『すべてを3D CAD化しないこと』です。2D/3Dツールのそれぞれの利点を活かし、適材適所で使用することが、設計業務の効率と投資効果を上げるポイントです」。これから3D設計ツールの導入を検討している中小企業の設計部門の人々にとって、嘉穂製作所の実践事例は、身近な気づきと有益なヒントを与えてくれるものでした。

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