Autodesk University Japan 2015

D-3&4 メディア&エンターテインメント

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ Animation / Effects Animation Lead イアン・クーニー 氏

ディズニー映画「アナと雪の女王」、「ベイマックス」におけるエフェクトデザインおよびプレビズ 1部&2部

エフェクトおよびレイアウト間のクリエイティブコラボレーションのためのデザインプロセス

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ
Animation / Effects Animation Lead

イアン・クーニー 氏

毎年、人気の的となるメディア&エンターテインメントのセッションは、今回も一段と大きな注目を集めました。特にD-3、4は、あのウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオからエフェクト・アニメーターのイ アン・クーニー氏が来日。世界中で大ヒットし日本でもブームを巻き起こしたアニメーション映画「アナと雪の女王」と「ベイマックス」を取り上げ、エフェクト作成とデザイン制作の舞台裏が紹介されました。

笑顔で挨拶したイ アン・クーニー氏はゆっくりした口調で語り始めました。「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは、最初の長編アニメーション映画『白雪姫』以来、数えきれないほどの長短篇作品を製作してきました。今回ご紹介する『アナと雪の女王』はその53番目の映画です。私たちはここでかつてない協調的なアプローチを試み、制作の早い段階からさまざまな分野のアーチストが参加して仕事を行いました。私自身は最初の4カ月はエフェクト・アニメーターとしてチームに組み込まれ、レイアウトアーチストと協力しながら進めていったのです。そのため、基本的なデザインに問題があっても早い段階で質問できましたし、いち早く問題解決を図れました。そして、そこで生まれたさまざまなアイデアは、プロジェクトが前に進むための土台を作ってくれたのです」

クーニー氏はまず「アナと雪の女王」のエフェクトに関するシーン、特にこの作品の最大の特徴である「雪」と「氷」の多彩な表現を示すエフェクトのハイライトシーンを上映しました。そして、2Dから3Dのパイプラインへ進化してきたディズニー・アニメーション・スタジオの制作スタイルの基盤にあるのが、日本の自動車メーカー・トヨタの生産方式に基づく「リーン生産パイプライン」であると明かしたのです。それは、早い段階で問題を捉えることであらゆる非効率をいち早く排除し、さらに継続的に「カイゼン」を続けていくことであらゆる変革を推進。同時にそれらに対するメンバーのコミットメントを養っていく、という考え方なのだとクーニー氏は語りました。

「つまり、失敗するなら早めに失敗してさっさと直そう――ということです。たとえば、エルサが氷の宮殿の階段を作りながら駆け上がるシーンをご覧ください。当初この場面はシークエンスごとに正しいカメラ角度をポジショニングし直し、スケーリングしていく予定だったため、ショットごとにコンポジションのし直しや改変の可能性が大いにありました。しかし、先にレイアウトと協力することで「最初の位置を変えないでいこう」という同意が得られたのです。結果「頭痛の種」を大きく減らせたのはいうまでもありません。もし予定通りそのつど対応していたら、最後のエフェクトの所など、ショットごとにこのリッピングを繰り返すという、とんでもない事態になっていたでしょう」。

こうしてクーニー氏は、本編映像はもちろん製作過程の秘蔵フィルムも惜しみなく公開しながら、エルサが操る「雪」と「氷」の魔法の、リアルかつ華麗なエフェクトのメイキングを詳細に解説していきました。それらのデザインのベースに、ノルウェーの気候や文化に対する緻密なリサーチ結果や雪と氷の専門家である科学者への取材成果が生かされていること。独自に「雪の結晶ジェネレータ」というシステムを開発したこと。MayaやSHOTGUNなど数多くのオートデスク製品が独自の工夫で使われていること。また多数のアーチストが協力しながら試行錯誤を繰り返し、最高のビジュアルを目指していったこと等々、同氏が語るメイキングは文字通り会場の聴衆の目と耳を釘付けにしたのです。最後にクーニー氏は、そんな聴衆へ感謝を込めて特別なプレゼントを贈り、第1部の幕を下ろしました。

「それでは、最後まで取っておいた一番のお楽しみをお贈りしましょう。いまから『アナと雪の女王』本編より『レット・イット・ゴー ~ありのままで~』のシーンをフルにお目にかけます。今回ご覧に入れるバージョンは、エルサが25カ国語で歌う特別編。世界の何百人というアーチストやテクニシャン、そしてマネージャが関わった仕事の1つのハイライトと言えるでしょう。そして同時に、出発点のアイデアがプロジェクトを進める中でも失われることなく、最後のフレームまで脈々と生き続けていることを確認いただければ幸いです。この素晴らしいプロジェクトに関われたことは、私たちの大きな誇りです。――では、どうぞお楽しみください。そして後半の『ベイマックス』篇にもぜひおいでください。アリガトウゴザイマス!」

第2部の開会が告げられ、満場の拍手が鳴り響くなか、笑顔のクーニー氏が登壇します。リラックスした様子で聴衆に挨拶の言葉を贈った同氏は闊達に語り始めました。ディズニー・アニメーション・スタジオ54番目のアニメーション映画『ベイマックス』で、同氏はアニメーション・リードを担当。セッション第2部ではこのプロジェクトで使われたツールやテクニック、アイデアを紹介するのはもちろん、スタジオがさらにレベルアップするために使っている最新ツールも紹介すると語りました。

「『ベイマックス』の製作では、スケジュール的なものや作品自体のスケール、カバーすべき範囲等々、当初から全てが非常に厳しい状況に置かれていました。だからこそいっそうクリエイティブに、より自由な発想を持って問題解決に当たる必要があったわけです。いまから思えばすごく大変な状況だったと思いますね。また、そうした課題の一方、このプロジェクトで、私たちはディズニーが開発した“Hyperion”を導入しました。この全く新しいグローバル・イルミネーション・レイトレース・レンダラーは、高度に複雑なシーンもサポートしてくれるので、私たちはこれまでにないような複雑なエフェクトも計画できるようになったのです。まさにHyperionによって、私たちは全く新しい境地に達したといえるでしょう」。

クーニー氏はまず『ベイマックス』への進化について語ります。エフェクトにおけるプレビズのプロセスが変わり、パイプラインは成熟の域に達し、ハードもソフトも豊富に揃い、今まで考えられなかったような初期段階で複雑なエフェクトをプレビズできるようになったと言います。そして、さまざまなエフェクト・リグをライブラリ化することで、時間やリソースの節約も可能になりました。同氏が「フロントローディング・エフェクト」と呼ぶこのアプローチを生かして、彼らが取り組んだ挑戦課題――すなわち極小ロボットの大群の奇怪な動作の可視化、ベイマックスの飛翔シークエンスの翼端渦のダイナミックな可視化等々について、実際の映像と共に具体的に解説していきます。

「ベイマックスの最初の飛翔シークエンスでは、ロケットスラスター等を可視化するため新しいツールが求められました。アーチストたちが実際に飛んでいるベイマックスを表現するには、リアルタイムなダイナミック・フィードバックが必要だったのです。そこでMayaのnParticleを使ってリグを作成することになりました。いろいろ詳細レベルのリグを作りましたよ。高速で旋回するジェット機の翼端に発生する翼端渦と呼ばれるものを実現するため、実際にジェット戦闘機を研究したりもしました。時速1,225Km/hの音速で飛行機が飛ぶと、目に見える衝撃波の航跡が生まれるんです。映画をご覧いただいた方はご存じの通り、できあがった飛翔のシークエンスはとにかく美しいシーンになりました」。

マイクロボットの挙動の可視化、ベイマックスの飛翔シークエンスのエフェクト。そして、エフェクトアーチストも「大好き!」という高層ビルの破壊シーンのビジュアライゼーション、量子物理学にヒントを得たというワークホールのクリエーションまで、第1部と同じく豊富な本編映像に制作途中の実験映像も多数流しながら、クーニー氏はどこまでも深く踏み込んで具体的に解説していきました。そして、最後はAUJ2015の全体テーマ「The Future of Making Things ―創造の未来」になぞらえ「エフェクトのプレビズのこれから」について、驚くほど具体的かつ明確な未来図を描いてくれました。また終演後も聴衆の質問に応えるなど、真摯に聴衆に向きあってくれたクーニー氏に、万雷の拍手が贈られたのは言うまでもありません。

「今後の計画についてですが、どのプロジェクトというのではなく私たちの取り組みの全てを通じて、あらゆるエフェクト・リグのアセット・ライブラリを作っていきたいですね。そうすることで、このスタジオの誰もがどの分野でも、またパイプラインのどの段階でも、これらのプレビズをドラッグ&ドロップして簡単に確認し、活用できるようにしたいのです。『アナと雪の女王』も『ベイマックス』も、その制作に参加できたことは私にとって大きな誇りです。これからもこんな映画を作っていきたいと、今から楽しみにしています。――ご来場くださった皆さん、今日は私の話を聞いてくれて本当にありがとうございました。私も楽しくお話しできました。皆さんも同じくらい楽しんでくれたら良いな、と思っています。アリガトウゴザイマシタ!」。

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