Autodesk University Las Vegas 開催レポート

Autodesk University Japan 2014
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Autodesk 360が開くクラウド新時代
新しいツールには新しい考え方を

AU Japan 2013 開催レポート

2013年12月3日から5日、米国オートデスク社はラスベガスで「Autodesk University 2013」が開催され、世界から過去最多の約9300人が参加した。基調講演を行った社長兼CEOのカール・バス氏と、最高技術責任者のジェフ・コヴァルスキー氏は、オートデスクのクラウドソリューション「Autodesk 360」による新時代の到来についてふれ、設計者の自由で新しい考え方が創造力を生むと語った。

カール・バス氏

「Autodesk University 2013」のオープニングセレモニーで基調講演を行う米国オートデスク社社長兼CEOのカール・バス氏

Autodesk University 2013(以下、AU2013)の幕開けを象徴する基調講演は、ラスベガスのベネチアンホテルのイベント会場で行われた。広大な会場は数千人の来場者で埋まり、プレゼンテーション用の映像は舞台後方の巨大なスクリーンだけでなく、その両側に広がる壁一面にまで拡張されていた。まさにラスベガスらしい演出と興奮の中、基調講演がスタートした。

まず舞台に立ったのは、米国オートデスク社の最高技術責任者(CTO)、ジェフ・コヴァルスキー氏だ。同氏はまず、「VUCA(ブカ)」という言葉によって、激しく変化する現在の社会情勢を指摘した。
VUCAとはVUCAはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(あいまいさ)の頭文字をとったものだ。そのうえで、「新しいツールの価値を最大限に生かすためには、新しい考え方が必要だ」と語った。
「われわれはこれまでの“内向き”に考える習慣を捨てて、”外向き”にパワーを使えるようにならなければいけない」と力説するコヴァルスキー氏は、これからの時代に生きる設計者や個人を取り巻く環境を使用するツール、人々とのかかわり、やるべき仕事、そして洞察すべきもの、という4つの側面について語った。

ジェフ・コヴァルスキー氏

AU2013のオープニングセレモニーで基調講演する米国オートデスク社CTO、ジェフ・コヴァルスキー氏

数千人収容の会場を埋めるAU2013の参加者たち

数千人収容の会場を埋めるAU2013の参加者たち

コヴァルスキー氏

鉄骨や配管がぎっしりと詰まった建物の3次元モデルを示しながら語るコヴァルスキー氏

まず、ツールについてはクラウド化が進み、インターネットやモバイル機器で様々な既存の設計リソースにアクセスできるようになった。コヴァルスキー氏は「初めに探し、それから作れ」と言う。つまり、簡単かつ安価にものづくりを行うステップは考える→探す→作る、という手順で行うべきであると提唱した。
「何かを手作業で行うよりも、似たようなものをスキャンしてコンピューターに取り込んだ方が簡単で安い。1から手作りするよりも、よりよいものができる。そのためにも外に目を向けることが重要だ」とコヴァルスキー氏は言う。
例えば「GRABCAD」とうサイトには90万人の技術者が参加し、31万5000個のCADファイルがアップロードされ、2000万回ものダウンロードが行われている。
「何かを作るときには、90%を既にあるものを探し、残りの10%だけを自分で作るようにするのだ。これがリアリティー・コンピューティングという考え方である。既にあるものはコンピューターに取り込み、本当に作る必要があるものだけに、貴重な時間を使うべきだ」(コヴァルスキー氏)。

次に外部の人々とのコラボレーションだ。今の企業は多くの他企業の技術や部品を取り入れて製品を作っている。
コラボレーションを表す言葉には、「オープンイノベーション」「クラウドソーシング」「共創」「ソーシャル製品開発」など様々なものがある。例えばプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、クラウドによって社内外のスタッフが協力して製品開発を行っている。
オートデスクのクラウドソリューション「Autodesk 360」は、多くの人々が製品開発のコラボレーションを行えるプラットホームだ。外の世界に目を向けることで、多くの専門家との連携ができ、生産性が向上する。そしてよい結果が得られるだろう。AU2013は、こうした専門家同士がコラボレーションする機会を発見する場を提供している。
外の世界がどれだけ見えるかは、自分の内側に持っている知識や技術などのリソースに依存する。
「若い人々が自分の考え方や消費動向をソーシャルメディアで発信すると、経験のある仲間はそこから学ぶことになる。これが逆メンタリングというものだ」とコヴァルスキー氏は言う。
「資源などの制約の中で、発展途上国用の製品を開発していると、先進国でも売れる製品になることがある。発展途上国からこうした逆イノベーションによって学ぶこともある」(コヴァルスキー氏)。
「結局、自分が設定した実現不可能な目標を達成できるかどうかは問題ではない。重要なのは不可能と思われることに挑戦することが自分の視野を広げることなのだ」とコヴァルスキー氏は講演を締めくくった。

続いて壇上に立ったカール・バス社長兼CEOは、製造業や建設業などの仕事の進め方が3D技術を活用したPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)やBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、そしてクラウドシステムによって大きく変わりつつあることを、様々な事例に基づいて語った。

アストンマーチンの新車

オートデスクのクラウドソリューション「PLM 360」を使って開発されたアストンマーチンの新車

「私はよくユーザー企業を訪れる。当社の製品をどのように使っているのかを見るのが楽しみだからだ」とバス氏は言う。
「アストンマーチン社を訪れたとき、英国の伝統的な自動車会社ならではの堅苦しく、頑固な雰囲気を予想していたが、それは間違いだった。彼らはクルマを設計する方法を革新していたのだ」とバス氏は振り返る。
映画「007シリーズ」で、主人公のジェームス・ボンドが乗り回すことでも有名なアストンマーチンの新車開発は今、デジタルモデルから始まるようになった。
3Dモデルでコンセプトを練り上げてクレイモデルも作る。そのモデルの形状をレーザースキャナーで計測し、ものづくりへと進んでいく、というプロセスをとることで、最良のクルマを最短の時間で作れるようになったのだ。こうしたものづくりを可能にしたのは、「PLM 360」というクラウドソリューションによる。
「2年前に当社はPLM 360のプラットホームについて発表した。世界初のクラウドベースのPLMソリューションだ。クラウドにあるということは、すぐに使えてもともとモバイル化できるということを意味する」とバス氏は言う。

バス氏

バス氏の基調講演中には、ロボットアームによるダンスも披露された

デンバー国際空港の拡張工事現場

デンバー国際空港の拡張工事現場では、建設現場用クラウドソリューション「BIM 360 Glue」や「BIM 360 Field」で、空港の3DモデルをiPadで活用している

バイオライト

シミュレーション用クラウドソリューション「SIM 360」で発電効率を飛躍的に高めた「バイオライト」

米国コロラド州のデンバー国際空港の拡張工事では、ホテルや鉄道駅の建設が行われている。この現場では、建物の設計にBIMを導入している。建物の3Dモデルの最新情報を「BIM 360 Glue」というクラウドシステムで建築設計者や施工技術者が共有しながら、建設を進めている。
ホテルやターミナルビルなどの建物のBIMモデルは、「InfraWorks」というソフトで空港全体を3Dのマスタープラン化し、様々な検討に使っている。また、3Dレーザースキャナーを使って現場の現状を3Dモデルとして記録し、設計に生かしている。
また、木を燃やす熱を使って携帯電話などを充電できる「バイオライト」という製品の開発には、「SIM 360」というシミュレーション用のクラウドシステムが発電出力を500倍に高めるのに、大きく貢献した。
「3年前に私はこの場でクラウドやソーシャルメディア、モバイルコンピューティングが仕事のやり方を変えるだろうと話した。今日は、そのいくつかをここで紹介できた」とバス氏は言う。
「さらに今朝、われわれは世界初のクラウドベースのCAMプラットホームである『CAM 360』を発表した。外に目を向け、外部のリソースを使いながらコラボレーションすることがますますしやすくなる。様々なクラウドクラウドシステムからなる『Autodesk 360』は、エンジニアのためのフェースブックのようなものだ」と、バス氏はクラウドによってこれまでにない、生産性の高い仕事が可能になることを力説して、基調講演を終えた。

バーチャルとリアルの融合による生産革命がテーマに
3Dプリンターや測量機器が目立った展示会場

AU Japan 2013 開催レポート

米国・ラスベガスで開催された「Autodesk University 2013」は、3次元設計によるバーチャルな世界と、ものづくりや工事などのリアルな世界の融合による生産革命が一大テーマとなった。そしてオートデスクが過去3年間、注力してきたクラウド技術は、世界各地の設計者や生産拠点を統合するシステムとしての位置付けが一段と明確になった。

Autodesk University 2013の展示会場

バーチャルとリアルの融合による生産革命がテーマとなったAutodesk University 2013の展示会場

会場のあちこちで行われた3Dプリンターのデモ
Autodesk University 2013(以下、AU2013)のセミナーや展示会を見て、強く感じられたのは「リアルとバーチャルの融合による生産革命」がテーマになっていることだった。
製造業ではPLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)、建設業ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)など、3次元による設計手法をバーチャルなデータとして作るだけでなく、工場でのものづくりや、工事現場での施工といったリアルな世界まで活用を広げることで生産性を大幅に高めようという動きだ。
バーチャルとリアルをつなぐ代表的なマシンとして、3Dプリンターがある。3次元CADやBIMソフトで設計したデータをもとに、そっくりそのままの立体模型を作ってくれるものだ。

3D設計システムと連携するハードウエアの展示

3DプリンターやCNC工作機械、測量機器など3D設計システムと連携するハードウエアの展示が目立った

3Dプリンターは5~6年前は1000万円以上する機種が多かったが、ここ2~3年の間に急速に低価格化が進み、現在では20万円程度の機種も増えている。
また、3Dプリンターの機種もバラエティーに富んできた。従来のようにプラスチックや石こうなど1種類の材料で造形する機種のほか、複数の材料を混ぜ合わせて造形することで部分によって硬さを使い分けられる機種、インクジェットプリンターのように着色済みの模型を作れる機種など、様々な3Dプリンターが登場している。

3Dプリンターのデモンストレーション

AU2013の会場のあちこちで行われた3Dプリンターのデモンストレーション

3Dプリンターで造形された模型の例

3Dプリンターで造形された模型の例

動く模型

もとデータ通りに自動的に着色した模型や歯車などを一体成形し、動く模型などバラエティーに富んでいる

デモンストレーション

展示会場の一角には本格的なCNCフライス盤が並び、デモンストレーションを行った

3Dデータから本物の機械部品を作るマシンとしてCNC(コンピューター数値制御)フライス盤も展示されていた。3Dプリンターは3Dデータに従って材料を積み上げて造形するが、CNCフライス盤は金属の固まりを3Dデータに従って削り出すことでギアなどの部品を作るものだ。
AU2013の会場で、オートデスクはCNC工作機械によるものづくりを支援する世界初のクラウドシステム「CAM 360」を発表した。世界各地の設計者と工場をクラウドでつなぎ、コラボレーションできる環境を作ることで、よりスピーディーな製品開発や製造を可能にするものだ

巨大3Dプリンターの試作機

巨大3Dプリンターの試作機

実物のビルを建設する超大型3Dプリンター
3Dプリンターを使って実物のビルや住宅を建設する技術の開発も進んでいる。12月4日に行われたセミナー「ビルドX」で講演した南カリフォルニア大学のベロック・コシュネビス(Berok Khoshnevis)教授は、繊維補強コンクリートを使って建物の壁や屋根を造形する「コンター・クラフティング」という技術を紹介した。
その原理は3Dプリンターと同じだ。コンクリートを吐き出すノズルを建物の外壁・内壁の断面に沿って移動させることにより、高さ数センチメートルの壁を作る。そして外壁と内壁の間をつなぐ補強部材をジグザグに造形する。この作業を何度も繰り返すことにより、建物の躯体を作ってしまう技術だ。

レイアウトナビゲーター LN-100

AU2013でトプコンが発表した新型墨出し器「レイアウトナビゲーター LN-100」

BIMモデルとともに現場上の墨出し点の方向と位置

レイアウトナビゲーターのプリズムポールに備えられたタブレット端末上には、BIMモデルとともに現場上の墨出し点の方向と位置が示される

測量機器の制御にBIMモデルを活用
工事現場では建物の基礎となる杭を打ったり、建物内部の配管を設置したりする時に、設計図上の杭や配管の位置などを現場に表示する「墨出し」という作業がある。昨年、オートデスクと提携した大手測量機器メーカーのトプコンは、AU2013で新型の墨出し装置、「レイアウトナビゲーター LN-100」を発表した。
現場内で基準となる位置にレイアウトナビゲーターを設置し、墨出し作業を行う作業員は位置誘導用のタブレット端末を備えた位置決め用のプリズムポールを持つ。そしてタブレット端末の画面上で杭の打設位置などがどちらの方向にあるのかを画面上に示して作業員を誘導する仕組みだ。
トプコンは、レイアウトナビゲーターのAPI(機器制御用の手順やデータ形式)を公開し、制御用のソフトを他社が開発できるようにした。そこでオートデスクはタブレット端末用の制御ソフトを開発し、作業員を誘導するモニター画面にBIMモデルを使えるようにした。
そのため、作業員はタブレット端末でBIMモデル上の墨出し点を確認すると同時に、画面左上に示された方向と距離を見ながら移動して、現場上の墨出し点を探し出す、という分かりやすい作業ができるようになった。
BIMソフトベンダーであるオートデスクが、トプコンの測量機器用の制御ソフト開発を行うことで、バーチャルなBIMモデルを、測量機器を通じてリアルな現場に落とし込む作業がいっそう行いやすいシステムとなった。

トプコンの新型3Dレーザースキャナー

トプコンの新型3Dレーザースキャナー。300m以上の距離を計測できる

現場を取り込む3Dレーザースキャナー
3DプリンターやCNCフライス盤、レイアウトナビゲーターなどはバーチャルな3Dモデルからリアルな模型・部品の製作や現場での墨出しを行うマシンだった。
その逆に、リアルな3次元空間をバーチャルなBIMモデルに取り込むマシンが3Dレーザースキャナーだ。
3Dレーザースキャナーとは、建物や道路などの表面に1秒間に数万回~数十万回もレーザー光線を照射し、数センチメートル間隔で表面の3次元座標を「点群データ」として計測する測量機器である。
展示会場ではファローやトプコン、ライカなどのブースで3Dレーザースキャナーの新製品が展示されていた。

「ReCap」のデモンストレーションカー

3Dレーザースキャナーを搭載したオートデスクの点群処理ソフト「ReCap」のデモンストレーションカー

ReCapの強化で点群データの扱いも楽に
オートデスクは2013年3月から、3Dレーザースキャナーで計測した点群データをBIMや3次元CADなどのソフトに取り込む前処理を行うソフトとして「ReCap」を提供している。
同12月にはReCapのプロ版が登場し、複数の点群データをターゲットなしで結合し、1つの点群データにまとめる機能が追加された。
また、点群データをクラウド環境で扱えるようにするための「ReCap 360」や、複数のデジタル写真データから3Dモデルを作る「123D Catch」のプロ版の位置付けとなる「ReCap 360 Photo」のサービスが始まる。
コロラド州のデンバー国際空港で行われているターミナル拡張工事でも、工事現場の現況や地形を点群データ化し、設計に生かす取り組みが行われている。オートデスクはリアルな世界からバーチャルなBIMモデルへのデータの流れについてもサポートしているのだ。

デンバー国際空港の点群データ

デンバー国際空港の点群データ

BIMモデルを使った施工管理

デンバー国際空港ではBIMモデルを使った施工管理が行われており、オートデスクは設計・施工チームをサポートしている

アストンマーチン

「製造業の事例ゾーン」に展示されたアストンマーチン

建物やクルマなど目立つハードの展示
AU2013は、オートデスクというソフトベンダーが開催したイベントでありながら、彫刻やクルマ、建物などの展示もあちこちで目に付いた。
「製造業の事例(Manufacturing Experience)ゾーン」では、オートデスクのソリューションで設計・製造されたアストンマーチンの実車や小型潜水艇が展示され、来場者の目を引いていた。
また「オートデスク建設ゾーン」では、配管や空調ダクト、配線などが取り付けられた建物のプレハブ部材や、外装材、型枠材などが展示され、その部分だけを見るととてもオートデスクの展示会とは思えないほどだった。これもバーチャルとリアルの融合による生産革命を象徴するものだろう。

レーシングカーの実車

レーシングカーの実車

小型潜水艇

小型潜水艇

オートデスク建設ゾーン

オートデスク建設ゾーン